2017年11月30日に第1刷が発行されてから、瞬く間にベストセラーとなったこの『お金2.0』。
著者の株式会社メタップス代表取締役社長の佐藤航陽氏のこの考え方に、私は非常に感銘を受けました。
最近ニュースなどでもよく見かける、ビットコインやイーサリアムに代表される仮想通貨、airbnbやUberなどのシェアリングエコノミー、マネーフォワードやfreeeなどのフィンテック、そしてタイムバンクやVALUなどの誕生で仕組みが整備されてきた評価経済。
それらは「お金」と「経済」に関わる事で、大きな変化の渦中にあります。
『お金2.0』というのは、「これまでとはお金の概念が全く違ったもの」という意味。
例えば、インターネットがなかった時代の広告コミュニケーションと、インターネットが日常生活の中にある現代の広告コミュニケーションぐらい、大きな違いがあります。
インターネットがなかった時代には、広告はテレビCM・ラジオCM・新聞広告・中吊り広告などで、一方的に生活者に対してPRされるものでした。生活者は受け取った情報に対して、他サービスとの比較検討をしたり、ほかの利用者の情報を知ることは限定的にしかできませんでした。
しかし、インターネットが日常生活の中にある現代では、facebook、twitter、instagram、比較サイトなどを活用すれば、ほかの利用者のレビューや本音を容易に知ることができ、判断材料にすることができます。
ようするに、「サービス提供側に、万が一ウソがあってもすぐにバレてしまう」という状況が出来上がっているのです。
それだけこの『お金2.0』時代には、これまでと大きな違いがあるのです。
そしていま、改めて「お金」とは何か、これからの「経済」はどうなっていくのか、私たちは未来を予測し、行動していかなければなりません。
そんな疑問に対してこの『お金2.0』は、ひとつの考え方を示してくれています。
例えば、クリエイターなら自分の作品が多くの人の目に触れるように「情報発信」し、興味・共感・好意を持ってくれる「人との繋がり」を増やし、ビジネスとして応援してくれるファン(顧客)という「資産」を築いていくこと。
ようするには、生活者をファンにするぐらい、価値を提供できるような「自分ブランディング」をどのようにしていくのか、という事です。
なぜなら、「資本主義」から「価値主義」へと移行していく時代には、実生活で役に経つ「有用性としての価値」だけでは不十分で、愛情・共感・興奮・好意など、生活者の心にポジティブな価値を与える「内面的な価値」が重要視されていくからです。
「価値主義」時代の到来を感じさせるサービスとして、例えばメタップスが最近リリースした「タイムバンク」は、個人の時間を売買できる取引所です。
10秒単位で時間をリアルタイムに売買できる仕組みを通じて、経済と時間の再発明を目指すというもの。
このサービスの中では、個人が持っている価値に応じて時間あたりの単価が異なります。そして相場は株式市場のように変化していきます。
登録者の中には、堀江貴文さん、落合陽一さん、箕輪厚介さん、はあちゅうさんなど、ビジネス業界での著名人などの他に、様々な分野の専門家や個人でブランディングをしている方などがいらっしゃいます。
購入者は「この人の時間を購入して学びを得たい」という事ができるのです。
著名な方の時間を購入して直接指導を受ける、という体験はこれまでのサービスではここまで体系化されたものはなかったのではないでしょうか。
私はこの画期的な試みが、ビジネスとして成長していくよう応援しております。
ここまでで、ざっくりとではありますが『お金2.0』について、その一端をご理解頂けたのではないでしょうか。
それではここから『お金2.0』について、要約・感想をご紹介していきたいと思います。
Contents
著者:佐藤航陽氏について
福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年に株式会社メタップスを設立し代表取締役に就任。
2011年にアプリ収益化支援事業を開始、世界8拠点に事業を拡大。
2013年より決済サービスを立ち上げる。
2015年に東証マザーズに上場。累計100億円以上の資金調達を実施し、年商100億円以上のグローバル企業に成長させる。
フォーブス「日本を救う企業家ベスト10」、AERA「日本を突破する100人」、30歳未満のアジアを代表する30人「30 Under 30 Asia」などに選出。
2017年には時間を売買する「タイムバンク」のサービスの立ち上げに従事。宇宙産業への投資を目的とした株式会社スペースデータの代表も兼務。
『お金2.0』要約
お金の正体とは、最初は価値の保存・尺度・交換の役割を持つものだった
歴史の中で「お金」が本格的に表舞台に出てくるのが、18世紀頃。
この時点で、労働などで提供した価値の対価として「お金」を得る労働者と、「お金」という資本を使って工場を所有する資本家に第別されるようになる。
「お金」が社会の中心になるにつれ、価値をどう提供するかよりも、「お金」から「お金」を生み出す方法を考えた方が効率的であることに気づいていく。
そして、「お金」に「お金」を稼がせる現在の金融市場が生まれる。
証券化というスキームが生み出され、「お金」を金融商品として販売できるようになり、「お金」に「お金」を稼がせる流れは加速していきました。
現在の「お金」は、価値を効率的にやり取りするための手段というものから、「お金」そのものを増やすことが目的に変わってきている。
仮想通貨とは、中央に管理者がいなくても成り立つバーチャル上の通貨である
一番代表的な仮想通貨としてはビットコインが挙げられます。
2009年にナカモトサトシと名乗る人物によって作られたと言われている。
ビットコインにはブロックチェーンという技術が使われており、一定期間のデータを1つの塊(ブロック)として記録し、それを鎖(チェーン)のようにつなげていくことで、ネットワーク全体に取引の履歴を保存し、第三者が容易に改ざんできないようになっています。
仮想通貨の種類は現在約1600種類とも呼ばれています。(2018年3月時点)
これまでの金融市場とは別枠で成り立つ市場だという理解をしておいた方が良いでしょう。
経済をうまく回すためには、人間が関わる活動について普遍的な構造を理解する必要がある

1)報酬が明確である(インセンティブ)
2)時間によって変化する(リアルタイム)
3)運と実力の両方の要素がある(不確実性)
4)秩序の可視化(ヒエラルキー)
5)参加者が交流する場がある(コミュニケーション)
上記の5要素を網羅する事で、自己発展的に拡大していく仕組みになる。
この要素をきちんと把握した上でサービス設計をしているかどうかで、その成長度合いやビジネスの成功確率は変わってきます。
最低限、上記の5要素は必要です。欠けている部分があれば、それを補足する取り組みを行なってみて下さい。
1)経済システムの「寿命」を考慮しておく
2)「共同幻想」が寿命を長くする
物事には必ず「飽き」という寿命が来るので、そういった事を見こした新たな提案やサービスを準備し、提供し続けていく事が必要です。
そして、サービスの参加者全員が同じ「思想」や「価値観」という共同幻想を抱いておく事。
変化に対応し続けていくための事前準備と行動が、経済に持続性をもたらすのです。
経済が自然に似ていたからこそ、資本主義はここまで広く普及した

1)自発的な秩序の形成
2)エネルギーの循環構造
3)情報による秩序の強化
3つの性質をまとめると、絶えずエネルギーが流れるような環境にあり、相互作用を持つ動的なネットワークは、代謝をしながら自動的に秩序を形成して、情報を内部に記憶することでその秩序をより強固なものにする。
出典:『お金2.0新しい経済のルールと生き方』より
「資本主義」から「価値主義」へ

資本主義でメインに扱っているもの。現実世界で使用できる、利用できる、儲かる、といった実世界での「リターン」を前提にした価値。
現在の枠組みで資本に転換できるものを前提とした価値。
2)内面的な価値
愛情・共感・興奮・好意・信頼など、実生活に役立つわけではないけれど、その個人の内面にとってポジティブな効果を及ぼす時に、価値があるという表現を使うもの。
3)社会的な価値
事前活動やNPOのように、個人ではなく社会全体の持続性を高めるような活動を価値があると表現する。
「価値主義」というのは、現在の「資本主義」で重視されている「有用性としての価値」だけでなく、「内面的な価値」「社会的な価値」すべて価値として扱う仕組みのこと。
そしていずれも脳の報酬系を刺激する現象であり、脳からすると等しく「報酬」と捉えることができる。
お金2.0とは、「これまでとはお金の概念が全く違ったもの」

これまで300年近く国家の専売特許とされてきた通貨の発行や経済圏の形成が、新たなテクノロジーの誕生によって誰でも簡単に低コストで実現できるようになりつつある。
出典:『お金2.0新しい経済のルールと生き方』より
2)資本にならない価値で回る経済の実現
「価値主義」の時代に必要とされる「有用性としての価値」「内面的な価値」「社会的な価値」の要素をすべて兼ね備えたビジネスが次々と出てくることになる。
「価値主義」が生まれるが、それは「資本主義」と共存していくと考えられている。生活者は自分の考えや立場に応じて、複数の経済圏の中から自分で選択して生きていくことになるということ。
「資本主義」の中で生きていく方が自分の生き方に合っている人はそちらを選択すれば良いし、「価値主義」で生きていく方が好ましいと考える人はそちらを選択すれば良い。
自分がどのような人生を歩んでいきたいかという事を明確にすれば、自然と自分が生きていくべき経済圏が決まっていく。
「価値主義」時代のビジネス例
タイムバンク
様々な時間を売買・保有・利用することができるマーケットプレイス。
専門家へのエントリーには、ユーザーからの投票をもとに、一定の条件を満たす必要があります。そして一定の条件を満たしたユーザーは時間を販売することができます。
「価値主義」の要素としては「時間」を通貨とする経済システムであること。
個人が持つ専門性を時間で売買することで、購入者は専門家から学びを得ることができ、提供者はその専門性を提供することで利益を得ることができます。
VALU
個人の価値をトレードできるマイクロトレードサービス。
個人の価値に焦点を絞り、その価値を市場で決めてもらう仕組み。
「価値主義」の要素としては、共感・好意を持ったユーザーを応援できるということ。
また自分の価値をVAとして発行し、ほかのユーザーに購入してもらう事もできる。
レターポット
お金を文字という付加価値にしてレターとして贈るサービス。
1文字5円で文字のレターを誰かに贈ることができます。レターを受け取った人は、さらに他の誰かへレターを贈っていきます。
「価値主義」の要素としてはお金で購入した「文字」を、誰かへのメッセージにしているところ。
まとめ・「価値主義」の時代にはどのようなサービスが必要とされるか
自分を枠組みの中心とした経済圏をつくること。
今回ご紹介したようなタイムバンクやVALU以外にも、これからも次々と「価値主義」時代を代表する新たなサービスが生まれてきます。
私はいまのこの流れを、千載一遇のチャンスと捉えています。これまでとは違う枠組みでのサービスが生まれはじめるという事は、いまのうちに先行でトライ&エラーを繰り返し、「価値主義」時代に受け入れられる経済圏をつくりやすい状況にある事だと考えています。
すべてはあなた次第。失敗してもいいのです。諦めなければ、必ず道は開けます。まずは行動を起こしていきましょう。